筆跡鑑定の歴史
筆跡研究の源泉は、古代ローマ時代のオクタビアヌス初代皇帝とされています。
当時のローマ帝国は、共和制の崩壊とともに、野心的な武将が輩出し、公文書の偽造や権利書さらには遺言書などの偽造により、多くの富を手にいれたものが多かったと伝えられています。
そこで初代ローマ皇帝が筆跡の識別を試みた、と示されています。
筆跡の解析は、19世紀に入ると筆跡学として学問の分野に発展していきます。
これは性格や状況によって筆圧、筆の速度、余白の取り方がどのように違ってくるかを実験と統計により解明しようと考えたものでした。
日本の筆跡鑑定の祖は、豊臣秀次から古筆の名字を与えられた「古筆了佐」です。
もう少し古い文献などにも筆跡鑑定人が何人か登場します・・が・・
「私には見えます・・筆者の顔が・・」など、何かに取り憑かれた方々だけでした。
この「古筆了佐」、本名を平澤範佐といい、戦国貴族の近衛前久より鑑定の伝授を受け、豊臣秀次より鑑定書に押す「琴山」の印と「古筆」の名字を受けました。
古筆家は江戸時代を通じ古筆鑑定の権威として大変に栄えました。
古筆家自体は昭和の初めまで鑑定に関わり「平澤了任」が最後の当主となり廃業しています。
判定の方法は、現在民間で行われている鑑定方法と、ほとんど変わりません。
1、古筆家創設以前の伝承を踏襲する
2、筆者が、他に筆跡を残している場合には、それと比較して筆者を特定する。
3、以上の方法で判断できない場合、有名歌人の名前を作者に仮定する。
具体的な検査方法は、まず初めに、大概・書風・墨色・紙質を検査します。
次に、外形・伝来・保存状態を見る。と、言うものでした。
この手法では、鑑定する側の各々の基準の違いにより、判定に違いが出てしまいます。
この鑑定人の違いによる判断のズレを、当主が勘と経験で補う、というものでした。
(これじゃ、代々継承された名家も廃業になりますよねぇ〜)
ですが、全て、いい加減な鑑定を実施していた訳ではありません。
もし、いい加減な鑑定を行い、それが周知に渡れば打ち首、お家断絶もある時代です。
何百年に渡る名家として君臨する為には、数々の科学的な試みも、されていました。
では、どのようにして真贋を見極めていたのでしょうか・・皆が納得する鑑定方法とは?
古筆家は、各作家ごとの「筆跡データベース」と、各時代・地域別の「紙データベース」を作り詳細に分析され、その結果を数名の学術会議を開催、解析されていました。
(すごい話し・・ですよねぇ〜) この一部が国立博物館に所蔵されています。 →こちら
その他にも、投影機や今のメジャーなども作られ、平賀源内の著にも登場しています。
さらに、現在、民間鑑定で行われている「文字をスキャナでとって濃度を色調に変換し観察する方法」は、約300年も前の古筆家で実施されていた「書を光りに翳し墨の濃度観察する方法」を、そのまま利用した方法で、影響力の大きさが伺えます。
明治時代に入ると、裁判制度が確立され、裁判所で筆跡鑑定が実施されるようになりました。
この当時の鑑定人は名家である古筆家が中心となり鑑定書を提出するようになります。
しかし、この古筆鑑定法、無理があります。
鑑定物は作家物から、契約書や遺言書など一般人の筆跡に大きく変化しました。
残念ながら、権威だけで、根拠がありません。・・作家別データも紙データも使えません。
すると、湧いてきますインチキ鑑定人、隙をみせるとウジャウジャ出てきます。
「我こそは古来中国鑑定法を会得した者である」とか、「大経師の直弟子であり新鑑定法を開拓した者である」とか・・・(゜∇゜
;)スッ・・スゲー!博物館学芸員になれるどぉ〜♪
当時の弁護士「播磨龍城」先生の著にも、「日当さえ貰えればという自称筆跡鑑定人が無制限にいて困る」と書かれています。
現在でも「筆跡鑑定」を「筆蹟鑑定」と書いたり、江戸時代の茶人や画家などの芸名を使用してインチキ鑑定する輩が多いのは、この古筆家の影響によるものなのです。
警察では、大正後期、ヨーロッパ留学した金沢重威先生が筆跡鑑定の草分けとされ研究が開始されました。
金沢先生の助手を勤めていた、高村巌先生の著に、昭和10年頃になると欧米法とは異なる漢字の鑑定方法を開拓出来た。と、書かれています。
昭和23年、科学捜査研究所が設置され、文書鑑定係が誕生しました。
時代は、大戦後の民主主義混乱期に突入、脅迫文書事件、失踪事件、捏造文書、偽造契約書、偽造遺言書など数々の文書事件が多発し、科学警察研究所と科学捜査研究所が本格的に筆跡鑑定研究を開始しました。
そして、研究者の目的は「高度で公平な科学的解析法」を目指す
法科学鑑定へと躍進して行ったのです。
文書(筆跡)鑑定の研究は、現代の科警研/科捜研でも脈々と受け継がれ
高度な進化を続けています。
筆跡鑑定人の世界では警察関係研究者が一番信頼度が高い
と言われていますが、筆跡鑑定法も何種類も存在します。
筆跡鑑定人の力量が試されると言っても過言ではないようです。
弊所では裁判等に対応する筆跡鑑定のみを取り扱っています。
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