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意外に思われるかも知れませんが、そもそも絶叫マシーンという乗り物は最も安全な乗り物です。
何重にもセイフティーがかけられ、安全には万全を期して設計されています。
ジェットコースターのように振動物の場合や環境が特に苛烈な場所などであれば、安全率を3.0として極限応力を荷重×3以上として設計します。
すなわち、一人あたりの体重を最大で100kgとしても、3倍の300kgの荷重に耐えうる事なのです。
現実問題として 「事故事例÷総搭乗者数=事故発生率」 としますと、事故率は今回の不幸な事故を含めたとしても、全体で考えた場合、限りなくゼロに近づきます。
皮肉なことですが、統計上では乳母車や三輪車の方が絶叫マシーンよりも圧倒的に危険な乗り物なのです。
そんな安全な筈の乗り物で何故今回のような事故が起こったのか考えてみますと、人災との結論に達します。
そもそも、事故とは責任、すなわち義務感の空白と希薄な人間関係が積み重なって発生します。
弊所では鑑定を通して個人法人を問わず、様々なトラブルを見つめてきました。
トラブルの発生した現場で共通していることは、法人を含めた当事者において義務感が欠如していおり、人間関係が希薄でなければ問題は未然に防げたと言う事実です。
惨事を伴う事故に限らず、各企業の不祥事・データ流出などの発生原因も突き詰めると 「義務感の空白」・「希薄な人間関係」 という単語で説明が可能なのです。
これまでの経験に基づく義務だけならコンプライアンスプログラムである程度のカバーはできます。
しかしながら、こと未経験な不測の事態に対しては、コンプライアンスに明文化されている義務だけでは対応しきれず、個々の義務感、すなわち携わる個々の人間性に頼るしかありません。
今回の事故に翻って考えてみますと、事故を未然に防ぐポイントは幾つもあったはずです。
金属はある日突然ポキリとは折れません。
折れる前にはコースターの通常の揺れとは違う不正な振動などの兆候が表れます。
また、コースターの作動音・通過音など音となっても表れます。
これらの兆候を見逃しさえしなければ事故は防げました。
しかしながら、当該遊園地には、従事者が守るべき義務、コンプライアンスは存在しても、義務感に基づいて現場が上に進言する義務感・それを行う自由で円満な人間関係が欠如していたのでしょう。
今、最も必要なことは一人の人間の命から教訓として何を学ぶかであり、責任者という名の生け贄を選ぶことではありませんし、醤醢をぶちまけることでもありません。
また、コンプライアンスの強化も、閉塞した空気を現場に醸造しかねず、むしろ危険とさえいえます。
過度な義務は、義務感を損なうからです。
「義務感の空白」・「希薄な人間関係」この現象は当該遊園地だけに存在するものではありません。
所得格差やアウトソーシングなどの雇用環境の変化の中にいくらでも見出すことが出来ます。
最終的には個々がどのように事故から教訓を学んでいくかといった人間性に帰結するのです。
今回、ネット上の掲示板などには被害者の体重を支えきれなくなって事故が起きたなど被害者を愚弄する書き込みが目立ちましたが、全くナンセンスとしか言いようがありません。
今回の教訓を最も学ぶべき人々は、その様な心の貧しい人々であることだけは確かです。
(2007/05/08研究員 石橋) |